市川雄一氏は独特な考えを持つ人物だった。
私が市川氏の第1秘書になったときに最初に言われたことは、私の党内における友人について、すべて断絶することを要求してきた。
曰く「お前が付き合っている○○は国対委員長派の男だからこちらの情報が洩れないように気をつけろ。これからは付き合わない方がいい」と。その時、私は大いなる違和感を抱いたが、秘書になるということはそうあらねばならないものかと暗い気持ちになった。
以後、私は市川代議士の忠実な人間として振舞うことになった。ある時、こんな考えを披露されたことがあった。それは、党内の主な国会議員や党職員について、自分は何%信頼しているか品定めをしているというのだ。
例えば、50%信頼できる人間なら、残り50%はいつか裏切るかもしれないのだから、そうなっても困らないように大事なことは50%に抑えて話すことにしていると言うのだ。
そして、私については、秘書として99%随順しているようだが、残り1%異質なところがあるように感じていて、99%信用できても1%信用できない人間の方が怖いので警戒している、と言うのだ。
今にして思えば、私に関するこのような人物評価は流石と言うしかない。秘書であるからには全力で職責を果たす努力はするが、私には私なりに極めたい人生の大目的があるので、この領域には誰人にも介入させることはないという鉄の意志をもっている。市川氏はそれが鼻につき気に食わなかったのかもしれない。